Plenary 1
イン・ナチュラ遺伝子発現で明らかにする変動環境に対する植物の適応工藤 洋 博士(京都大学生態学研究センター)

自然生育地においても手軽に遺伝子発現やエピゲノムデータを取得できるようになった。数万の遺伝子の働きを同時に測定できるので、機能的に多様かつ多数の形質値が得られる。適応度を構成する生物形質は複合形質であるが、それを個々の遺伝子の発現までに分解して解析することができるのだ。そこで、生物の形質・機能を自然生育地で解析することをイン・ナチュラ研究と呼ぶことにし、フィールドとメカニズムの両方を扱う研究を進めた。対象は、日本に自生するハクサンハタザオというアブラナ科の植物である。他殖性の交配様式をもち、クローナル繁殖も可能であり、多年草で常緑であるために年中各種の物理的ストレス・生物的ストレスにさらされ、地理的分布・標高分布も広い。様々な側面での研究の機会を与えてくれる。同属の一年草シロイヌナズナがモデル植物で、遺伝子のアノテーション情報が活用できるし、新しい手法が導入しやすい。さらに、固着性、モジュール性といった植物の性質が、同一個体からの長期時系列サンプリングを可能とし、また遺伝子発現応答が環境応答に直結するなど、研究のしやすさも特徴である。最近はハクサンハタザオを扱う研究者人口も増え、注目株の植物種である。講演では、これまでのハクサンハタザオ研究から、遺伝子発現やエピゲノム動態によって興味深いことが分かった研究例を紹介する。
Plenary 2
動物の系統類縁関係と脊索動物の起源について
佐藤 矩行 博士(沖縄科学技術大学院大学)

多くの動物はカンブリア紀に出現して以来およそ5億4千万年の間ダイナミックに起源し進化してきた。現存する多細胞動物はそのボディプランの違いなどをもとに海綿動物から脊椎動物にいたる約34の門に大別されている。その系統類縁関係は長い間議論されてきたが依然として未解決の部分も多い。しかし、最近の分子系統学的解析などからようやくその全貌が見え出している。ここでは我々の研究グループによる解析結果も踏まえつつ、とくに海産無脊椎動物の系統類縁関係を、中生動物・腕足動物・箒虫動物・紐形動物・毛顎動物・外肛動物・内肛動物などを含めて議論する。次に脊索動物の起源と進化について議論したい。頭索動物(ナメクジウオ)、尾索動物(被嚢動物: ホヤ)、脊椎動物の3群からなる脊索動物は、私達ヒトへの進化と関連しつつ長い間議論の対象となってきた。分子系統学的解析などから頭索動物が最も早期に分岐したことや、尾索動物は動物で唯一自らセルロースを合成することができ、セルロースを含む被嚢に囲まれた成体が、独特の付着性の生活史を送るという進化をとげたことなどが分かり出しているが、その進化発生学的メカニズムはどのようなものであったのか、ゲノムや遺伝子ネットワークの解析の結果を踏まえて考察したい。
Symposium (number tentative)
S1:トランスポゾンが駆動するゲノム・エピゲノム改変と進化
提案者:西原秀典(近畿大学)、一柳健司(名古屋大学)
S2:動物における個体性の逸脱・喪失
提案者:小口晃平(東京大学)
S3:古代オミクス研究からの進化学の新展開
提案者:寺井洋平、大田竜也(総合研究大学院大学)
S4:機能的側面から読み解く感覚受容の進化と環境適応
提案者:小柳光正(大阪公立大学大学院理学研究科)、齋藤 茂(長浜バイオ大学バイオサイエンス学部)
S5:RNAウイルスハンティング2.1
提案者:中川草(東海大)、坂口翔一(大阪医科薬科大)
S6:理論・植物・動物—かたちの進化可能性
提案者:東山 大毅(総合研究大学院大学)
S7:骨太なオミクス解析で解き明かす生物進化—その研究、進化学会で発表してもらえませんか?
提案者:原 雄一郎(北里大学)
Workshop (number tentative)
W1:環境水ゲノムサーベイランスから考える微生物多様性研究の可能性
提案者:阿部貴志(新潟大学大学院自然科学研究科)、馬場知哉(情報・システム研究機構)
W2:マルチパートナー共生系を識る
提案者:松浦優(琉球大学・熱帯生物圏研究センター)
W3:新たに開拓する有用昆虫 ―遺伝子から表現型まで―
提案者:里村 和浩、小倉 淳(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部)
Evolution Summer School
「進化生物学にも有用!ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)が提供する多様なリソース」
概要:
NBRPは、生物個体、ゲノムデータ、表現型情報など、ライフサイエンス研究に不可欠な多様なバイオリソースを提供しています。データ駆動型研究が進展する中、さまざまな生物の特性を評価し、研究に最適な材料 を選定することの重要性が高まっています。本企画では、NBRPが提供する動植物などのリソースやデータセット、ツールについて、進化学研究にどのように活用できるかを、具体的な研究事例とともに紹介していただきます。
講演者:
佐藤 修正 博士(東北大学|NBRPミヤコグサ)
佐藤 豊 博士(遺伝学研究所|NBRPイネ)
井川 武 博士(広島大学|NBRPツメガエル・イモリ)
竹花 佑介 博士(長浜バイオ大学|NBRPメダカ)
Public Lectures
DNAからみたアジアの動物の進化・多様性・歴史
開催日時
2025年8月23日(土) 13:30~16:00(13:00受付開始)
会場
滋賀県長浜市 長浜バイオ大学
プログラム
田畑 諒一 博士(琵琶湖博物館)
「古代湖・琵琶湖の魚類の起源と歴史」
西川 完途 博士(京都大学)
「両生類の系統分類・多様性・外来種問題」
今井 啓雄 博士(京都大学)
「ヒトを含む霊長類の食の進化・多様性・歴史」